今年、6月7日に『第36回全国「みどりの愛護」のつどい』が開催される松戸市。
そこで今回は松戸の「みどり」にスポットを当ててみたいと思います。
松戸はみどりが多い街?
東京都心から約20km。都心へのアクセスの良さから、高度経済成長期に宅地化が進んだ松戸市。
開発により多くの森や農地が住宅地へと姿を変えましたが、一方で市内にはまだ希少な「みどり」が残されています。

江戸川の土手から松戸市側を眺める。ねぎ畑の先に見える森が矢切の「斜面林」で、その奥が下総台地となっている
江戸川に下総台地と、起伏の多い松戸の地形。低地では「ねぎ」などが、また台地では「梨」など、地形に合わせた農業が行われているのも特長のひとつです。そんな中、低地と台地の境にある「斜面林」が市内の随所に多く残されているのはご存知でしょうか?
同じように起伏の多い地形でも、横浜などでは斜面地が住宅開発されているのに、松戸にはなぜ斜面林が残ったのか?
実は、斜面地の造成は費用がかかる割に開発できるスペースが少なく、特にバブル崩壊後に開発が進んだ松戸の斜面林は、幸いにも開発の波を免れたという経緯があります。

東松戸地区では住宅地から少し歩くと昔ながらの自然の景色が残ります。今もタヌキが生息しているとか

森とマンション群との共演も松戸ならではの光景
また市街化調整区域も多く、東松戸や金ケ作などの地域では住宅地と昔からの自然が共存しているのも特長です。
市民主導で森を保全
市内のあちこちに残る「みどり」ですが、民有地の森を市民のボランティア団体が保全活動をしているのも松戸の特長。そのきっかけとなったのは『関さんの森』 と言われます。
『関さんの森』は昔からの屋敷林。民有地を市民団体が中心となって保全活動を行う市内最初の事例で、その後2000年には『緑のネットワーク・まつど』が設立。
同じタイミングで『松戸市緑推進委員会』も発足し、その後は官民が連携した緑のまちづくり体制が出来ていくことになります。

みどりを残す市民活動が盛んなのも松戸市の特長
(画像提供:緑のネットワーク・まつど)

定期的にさまざまなイベントが開催されています
(画像提供:緑のネットワーク・まつど)
活動の輪はさらに広がり、民有林の維持管理活動を行う「松戸里やま応援団」が生まれ、その森を公開する「オープンフォレストin松戸」が開催されるなど、市内各地で市民主導による保全活動が広がることになります。
そして2013年、松戸市の樹林地保全の取り組みは『第30回 緑の都市賞』緑の都市づくり部門で国土交通大臣賞の受賞をはじめ各賞の表彰を受けるなど、その知名度を全国に広げるきっかけにもなりました。
“松戸のみどりをこれ以上減らさず、残したい”
そんな市民の気持ちが民有林を対象にした里山の保全活動の輪を広げ、現在は「松戸里やま応援団」を中心に市内15か所以上で“森”の保全活動が行われています。
後世に伝えていくために

金ケ作地区の「囲いやまの森」で秋に開催される体験イベント『あそびの森』の様子。子どもから大人まで多くの人が集まります
(画像提供:緑のネットワーク・まつど)
とはいえ、森を維持していくのは簡単なことではありません。
森を保全する活動の輪が広がる一方で、人手がなく放置されたままの民有林が多いのも現状。また宅地化が進んだ市域であるがゆえに、落ち葉や日照など、周辺からの苦情に悩まされる所有者も少なくないと言います。
また、松戸市内で保全活動している大半の森は民有地。土地所有者が相続の問題から売却してしまうなど、さまざまな課題が多いのが現状です。
そんな中でもメンバーの皆さんは、街のため、そして後世のためにも活動を続けています。
子どもたちや若い世代向けの自然体験イベントも定期的に開催している森もあり、ぜひその魅力に触れて欲しいと言います。

『オープンフォレスト』などのイベントでは森の中にブランコも。大人でも童心に戻れる、それが森の良さなのかもしれません
(画像提供:緑のネットワーク・まつど)
「みどり」は松戸が誇る“財産”
今回取材して感じたことは、松戸の「みどり」の保全活動は、行政のみならず市民の協力があってのものということ。
都心から近い場所にも関わらず、これだけ多くの「みどり」が保全されているのは、松戸の誇るべき点なのかもしれません。
大人から子どもまで楽しめる松戸の自然。皆さんもぜひ「みどり」に触れてみてはいかがでしょうか?