松戸まつど
ライフプロモーション
みどり・農 2020年2月3日

「あじさいねぎ」主役プロジェクトにトライ!~生産農家・シェフ・学生がスクラム~

2019年、ラグビーワールドカップ盛り上がりましたね。
今年2020年はオリンピック・パラリンピックイヤー!
実は、昨年11月、ねぎ農家の一大イベント!全国22産地から24ブランドものねぎが集結する「全国ねぎサミット2019inまつど」が21世紀の森と広場で開催され、記者も出かけました。

 大学、レストランとあじさいねぎがコラボ!?

 和洋女子大学の学生がなぜココに?

早い時間に出かけた初日の午前はあいにくの大雨。しかも、寒~い!
そんな寒さの中「いかがですか~!」と学生達の明るい声と食欲をそそる匂い
「パストール」は前回取材の打ち上げ会場で知った美味しいお店!!
市民記者となりよく耳にするようになった「あじさいねぎ」
これは食べるしかありません。

ポタージュ

 クリームチーズのカナッペ

「美味い!」としか言えない。冷えた体に染み渡る、甘く香るポタージュ、
「ビールやワインと一緒に食べたい!!」甘ずっぱいクリームチーズのカナッペ。
イベントの出店には珍しい、本格的な洋食メニューに「もう1度食べたい」
「良い香りのする鶏もも肉のグリルも食べてみたい。」が、同行した妻の感想でした。

和洋女子大学の学生によって考案されたメニューの詳細は後半に登場 [写真提供:JAとうかつ中央]

「あじさいねぎを主役に!」実はこれらの料理、和洋女子大学健康栄養学科の学生イタリアンレストラン3店舗JAとうかつ中央産学連携によるコラボメニュー!参加したレストランは松戸市から「トラットリア・パーチェ」「パストール」、流山市からは「コメ・スタ」という豪華な顔ぶれ。
その中から、今回は松戸駅西口「居食屋ダイニングPastorl(パストール)」(以下Pastorl)にご協力をいただき、メニュー開発の一部を取材しました。

松戸ブランド「あじさいねぎ」
『あじさいねぎ』は2004年に商標登録された千葉県松戸市の特産品の葉ねぎ。
長ねぎより短く、葉の部分も白い部分も楽しめ、1年中出荷されているそうです。
ねぎサミットの詳細や畑の現場について倉地 大記者が取材しています。

味(あじ)と彩り(さい)、紫陽花(あじさい)がネーミングの由来

本土寺。JR北小金駅から徒歩圏。あじさい寺として有名

その特徴は、①白い部分は長ねぎと同じように②葉の部分はしゃきしゃきとした食感と柔らかさ。火を通した後の緑色の鮮やかさと甘み③根っこは素揚げに。
小金園芸品出荷協会の農家が生産しています。(出典:JAとうかつ中央「あじさいねぎレシピ集」)
ねぎの良いとこどりのアドバンテージがあります。

誰にも奪えないあじさいねぎ愛
今回、大学とレストランのコラボについてあじさいねぎ農家の成嶋伸隆(なるしま のぶたか)さんにお話を伺いました。畑にGO!と思いきや…

野菜ソムリエ・食育ソムリエとしても活躍する成嶋さん

「皆さんこんにちは!畑の方から来た成嶋です。」
成嶋さんは小金園芸品出荷協会の理事としてあじさいねぎの普及に尽力するだけでなく、月に1回、ラジオ ポワロ「まつどベジフル倶楽部」でアグリカルチャー番組のメインパーソナリティとして5年に渡り松戸産野菜の紹介をしています。

まつどやさしい暮らしラボメンバー・ラジオポワロ上條榮子(かみじょう えいこ)さん「昨年後半の成嶋さんはコピーロボット(笑)か分身が必要な忙しさでした。」
成嶋さんはねぎサミット全体の実行委員会に、作業部会に、あじさいねぎの話題作りでは、大学とのコラボメニュー開発、レシピ集作成、さらにジェラートの企画まで大忙し。

収録現場を直撃。ナビゲーターの上條さん(写真左)

成嶋さん「和洋女子大学は学生によるメニュー開発の実績があり、産学連携によるあじさいねぎの知名度アップを狙っています。さらに管理栄養士を目指す学生たちが、卒業後に食にかかわる職場に就き、社会人として仕事で使ってくれること、もちろん家庭の食卓でも使ってほしいという10年、20年先まで見据えた長期的視野で期待しています。」

番組では、お二人の「ラグビーでいえば、これまで美味しいところを矢切ねぎにジャッカルされ続けてきた。」とか「あじさいねぎ洗脳計画」など、成嶋さんにより綿密に作られた台本と、時に脱線(笑)するトークがリンクから楽しめます。

メニューの開発
ねぎサミットin松戸の開催決定後、松戸市役所農政課がJAとうかつ中央を介して産学連携に実績のある和洋女子大学に打診したのがきっかけで、コラボメニュープロジェクトがスタート。
Pastorl代表・土屋正明(つちや まさあき)シェフに伺いました。

東京電機大高校時代は自転車部。インターハイ出場!

土屋シェフは幼稚園から中学までずっと松戸の地元愛あふれる人物。そしてプロを目指したこともあるほどのスポーツマンらしく、とても活動的な方でした。
「あじさいねぎを主役にイタリアン!?
最初はちょっと難しいと思いましたが、ちょうど松戸市役所の『畑で婚活』事業の料理部門の講師もしていましたし、同じ町内で消防団活動も一緒の農政課の方にお話をいただきお引き受けしました。
ねぎサミット自体は初耳、10回を迎える全国イベントで失敗はできないとその後聞きました。」


学生の専門性、自由な発想
土屋シェフが大学に出向いて驚いたのが「給食経営管理実習室」の素晴らしい設備、
そして何よりも学生たちの専門的知識と自由な発想だったそうです。

料理をブラッシュアップするために、5回も打ち合わせが行われていた。 [写真提供:JAとうかつ中央]

土屋シェフ「我々プロには美味しい料理を作るうえでこれは間違いないという調理法があります。しかし、驚いたのは『これ本当に作れるの?』という学生のアイディア。」
刻んでかける・付け合わせの「脇役」からゴールの「主役」を目指し、学生とシェフのパスの展開、突進が始まりました。

 お店の厨房

土屋シェフは若い学生達の感性や管理栄養士の卵としての専門性(栄養価計算など)を生かしつつ、提供するメニューとしての実現可能性、味・香り・彩りなどの完成度、原価率といった採算性を伝えます。
学生の「これだと脂質が上がります」の意見に思わずドキリとしたこともあるそうです。


記者発表
着手して5か月。記者発表・試食会が行われました。
レシピの発表、サミット当日の屋外テントでのプレ販売、12月から3か月にわたる実際の店舗での提供が各種メディアで報道され話題になりました。

農協関係者も同席した記者発表に臨む学生、Pastorl土屋シェフと成嶋さん(後列右方)
前列はコメ・スタ橋本料理長(左)、トラットリア・パーチェの宇佐見オーナーシェフ(中央)[写真提供:JAとうかつ中央]


学生・シェフ渾身のメニュー

2008年開業以来初の「お勧めメニュー」

土屋シェフ
「学生に触発された斬新な料理になりました。レシピ開発からサミット当日まで本当に良く頑張ってくれました。
店は開業12年目ですが、前面にお勧めメニューを出したのは初めて。私も良い経験になりました。
実際、来店して下さった8割のお客さまがお勧めメニューを注文してくださいます。」
記者は3度Pastorlに通いました。
その中で、同行した「ねぎが苦手…」という市民記者の一人は「嫌いな原因のえぐみとか、辛み、臭みが除かれている。」と驚きの声。
本当に何度食べても美味しく、そしてまた食べたくなる味でした。
シェフの解説とともにご覧ください。

フレッシュあじさいねぎのイタリアンマリネ

あじさいねぎのポタージュ

①”ねぎ科を生でマリネ”は日本初かもしれないそうです。シェフは学生の発想に驚かされつつ、シャキシャキ感を残すために調理法を試行錯誤して完成した一品。
②ねぎの香り、甘みと色を生かしたポタージュ。ねぎの繊維は意外と強かったり、加熱しすぎると鮮やかな緑が出ないため調理法に工夫。生クリームも贅沢に使い、採算ラインギリギリでお得感満載。

③あじさいねぎのチーズクリームカナッペ

④あじさいねぎたっぷりのガーリックバターソース

③カナッペは、最初はジェノベーゼを使った甘いものという発想から始まり、最後にクリームチーズのカナッペで決着。
④鶏もものグリルはソースにねぎをたっぷり、たまねぎを角切りにして歯ごたえを演出。ニンニクの香りを加えたことで屋外販売のサミットでは集客の切り札に。

⑤あじさいねぎとシーフードのジェノベーゼ

⑤パスタは定番メニューのため、最初の段階では「ありきたり」ということでリストから外れそうになったそうです。
土屋シェフ「開発するだけでなくメニューが売れることも大切。多く売れることで農家からの仕入れが多くなり、農家の期待に応えられることを学生達に知ってほしかったです。」

 [撮影協力:市民記者 篠澤史子、清水美恵子、水村和香]

和洋女子大学の取り組み
今回の連携事業は、千葉県主催事業に和洋女子大学の学生が参加したのがきっかけ。JAとうかつ中央、生産農家から「あじさいねぎは古くから松戸で栽培されているが、市内でもあまり知られていない。少しでも認知度を高めたいが、学生とのコラボでなにかできないか」との働きかけがあったそうです。
和洋女子大学家政学部健康栄養学科登坂三紀夫(とさか みきお)学科長に伺いました。

 登坂三紀夫教授 [写真提供:和洋女子大学]

「健康栄養学科では10年以上、毎年2~3件の産学連携のお話をいただき、テーマに応じて2年生または3年生に声をかけ参加を募っています。
今回ねぎサミットのお話をいただだいた際には、今までに取り組んできた産学連携の例をお話しして、メニュー開発、販売、販売促進活動としてプレス発表等を提案させていただきました。」

「学生自身いろいろ考えて参加していると思いますが、授業として取り組んだわけではありません。学生たちが考えてきたレシピに対し教員と助手は、学生のアイデアを邪魔しない程度でアドバイスしました。取り組んだ成果は就職活動などにも活用してほしいですし、プレス発表まで経験したパブリシティー活動は、社会に出てから多少なりとも役立つのではないかと思います。」

記者発表での学生たちの様子

大学ホームページに掲載された今回の取り組み


ノーサイド
全国22産地のねぎが集結したねぎサミット。安全・安心な野菜を届ける産地の代表チームによるねぎ産地PR合戦も終わりました。そんな中、若い力を取り入れ産学連携によりワンチームとなったあじさいねぎの躍進が光りました。
最後に農家の成嶋さんに伺いました。
成嶋さん「学生の若い発想力を期待して始めた企画でしたが、想定していた以上の収穫がありました。これをきっかけに、生産者が愛情を込めた『ビタミンⅠ(愛)』をたっぷり含んだあじさいねぎを、もっともっと多くの人に知っていただけたらと思います。」

成嶋農園のあじさいねぎ畑 [撮影:市民記者 倉地 大]

全国ねぎサミットをゴールに決めて走り続けてきた”チームあじさいねぎ”が見事にトライ。記者は生産者達が畑に腰を落としてねぎの土をはらった、ゆるやかな冬の日を思い浮かべました。

お知らせ

[撮影:市民記者 清水美恵子]

土屋シェフ「スタッフ一同、技術を活かしてきちんとした、美味しい料理を提供してまいります。
店名はイタリア語の食べる「パスト」からの造語です。

愛する地元松戸で開業した理由でもあるのですが、良質の材料を使いつつもお値段はリーズナブル、肩肘を張らずにお箸でもイタリアンを楽しめる「居食屋」でありたいと思います。」

住  所:松戸市本町12-5
電話番号:047-360-6447
営業時間:午後5時~午前1時
定 休 日:水曜日

写真撮影も学生が行い審査対象になっている。

「もっとあじさいねぎを身近に!」多くの学生たちが応募した中から、作りやすさ、アイディア、千葉県らしさ、盛り付け方の4項を採点。松戸市長賞など審査上位作品を掲載。
リンクからPDF版の中身をご覧いただけます。
発行:JAとうかつ中央
協力:川村学園女子大学
   和洋女子大学
       小金園芸品出荷協会

成嶋さん「今回の産学連携であじさいねぎはいろんな料理に使えることが改めて確認できました。
レシピ集には予想を上回る応募がありました。
ねぎのチーズケーキ、ねぎティラミスなど試作段階までいき、個人的になぜ不採用?というほどの美味しさでした。
今後は和・洋・中のジャンルを巻き込んだ『あじさいねぎレシピ開発飲食店コラボ』も行いたいと考えています。
ぜひリンクしたあじさいねぎのFacebookを注目してください。」

千葉 淳

千葉 淳 (ちば じゅん)

「人生は旅」、学校卒業後、松戸市民から転勤族に。東北勤務時代に家族と「おくの細道」をたどるサイクリングを始めました。平成26年、転勤で帰郷をきっかけに市民ライターに応募。週末は”松戸芭蕉”になり、自転車に乗って松戸再発見の旅にでかけています。

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