近い将来、「レモンといえば千葉県松戸産。知らないの~?」という日が来るかもしれません。
記者(56)の世代はレモンといえば「サンキスト」。カリフォルニアのイメージが強いです。
国内では瀬戸内海地方など通年で温暖な地域が産地のようです。
取材のきっかけはラジオポワロ。
千葉県松戸市を元気にする情報、よもやま話が聴けるネット配信のラジオ。
パーソナリティー上條榮子(かみじょうえいこ)さん
「美味しいと聞いていた新松戸産のレモン!
買った場所は新松戸中央公園の近く。新松戸の直売所で地味に売っているので広めたい。」
との話題でした。
(記者)「なに?(地元)新松戸のレモン!?」
ラジオ配信後、ネット検索しても生産者の名前はおろか連絡先も分かりません。
編集会議出席者や事情通の商店主に伺うと
「新松戸の鵜殿(うどの)さんが生産しているらしい」との情報が。
なんと、灯台下暗し、近所のマンションに住む義母から超有力情報がありました。
「(マンションのベランダから見える)
9月頃に完成したお洒落なお店がそうでは?」
アポなしで(笑)直接訪問して取材交渉しました。
鵜殿敏弘(うどのとしひろ)さん 65才
松戸出身、松戸育ち
記者と同じ小金中学の大先輩!
東京農業大学卒
「最初の偶然のレモン栽培から約30年。
本格生産に入って7年になります。
今年(2018年)9月に直売所を始めました。」
奥様の優子さん
東京出身
敏弘さんと結婚して松戸へ
「うちのレモン可愛いです。
皮も薄くて美味しいんですよ。
ケーキ屋さんにも使っていただいています。」
長男の崇史(たかふみ)さん 35才
駒澤大学経営学部卒 何と文系!
自動車販売会社から家業に入り4年目
「農業に関して農大出の父、叔父には遠く及びませんので二人の下で、そして独学でも勉強中です。」
鵜殿芳行(よしゆき)さん 59才
敏弘さんの弟
東京農業大学卒
「この直売所の前身となる園芸店で鉢植えのレモンを扱っていましたからその時からのお客さまもいらっしゃいます。
直売所はできたばかりで、代表電話もまだないんですよ。」
宣伝開始前に記者のアポなしの訪問。
取材依頼に驚きながらも親切に応対いただきました。
「国内産と輸入品の大きな違いは食品添加物。
ポストハーベストという言葉を知ってますか?
輸入時、長時間の輸送・貯蔵中のカビ発生を防止するために収穫後に使用される農薬(ポストハーベスト)のことです。
ワックスとは被膜剤と呼ばれる食品添加物のこと。国内産にはこれがほとんど使用されていません。」
〈スーパーなどの店頭で見かける防カビ剤表示〉
「食品衛生法の基準に従って、防カビ剤として、チアベンダゾール(TBZ)、イマザリル、フルジオキソニル‥を使用しております。」
国内の法律では収穫後の農薬は食品添加物として扱われ、健康に影響を及ぼさないよう、使用基準が定められているようです(下記リンク参照)。
記者の感想は「酸っぱさにピリピリ感が無くて爽やか。砂糖を入れたホットレモンが薬臭くなくマイルド!」
情報提供者の上條榮子さんは
「ハマっちゃってヘビーユーザーになりました。
皮まで美味しいです。
レモンサワー最高です。」
記者の友人も
「紅茶に入れて飲んでみました。
酸味があるかと思いきやまろやか。なぜ?」
「ハイボールと蜂蜜漬を作りました。マイルドな酸味が美味しいです。輪切の皮が美味しいです。」
と松戸産に驚きつつ絶賛。
鵜殿さんのレモンは取材時2個200円でしたので
1個100円~
記者が沿線のスーパー3店、果物店1店を実際に訪ねたり、ネットで調べたところ
店頭 国産 120円~ 外国産 98円~
ネット 同上 286円~ 同上 118円~
大きさの違いもあり一概に比較はできませんが
国内産は外国産と比べやや高めです。
値段が同じ、いえ、多少高くても、産地に近い松戸産を選びたくなります。
ご存知の方もいるかもしれませんが、レモンは鉢植えで栽培ができます。
ただし、収穫量は少なく、年間10個採れる方はかなりの腕前だそうです。
偶然植えたレモンが松戸の気候でも生育することが分かったのです。
苗には生産者の登録があり勝手に増やすことは禁止されているそうです。
苗を仕入れ試験栽培が始まりました。
品種は比較的寒さにも強いマイヤーレモンを生産することに。
「当たり前ですが、果実は収穫まで味が分かりません。
最初の収穫までは3~4年、本格的収穫には10年かかります。
この土地でレモンを始めとする美味しい柑橘類が採れるか試行錯誤の連続でした。」
「ライムは少人数の家族で使い切れるサイズを意識しました。」
レモン以外にもライム、温州みかん、キンカン、オレンジ類のはるみ、せとか、麗紅を試します。
レモンの収穫は9月から2月まで。
その後は麗紅、甘夏、ブラッドオレンジ等が3月まで収穫できます。
北風の強い、12月の土曜日。赤坂・アークヒルズで開催されているヒルズマルシェで崇史さんを追ってみました。
崇史さんのスマートに「こんにちは」と声をかけるタイミングが絶妙です。
「急ぐので巻きで取材して(笑)。私は自宅の鉢植で年間収穫量10個。ここにいろいろ聞きに来るのさ」という男性のお客さまなど常連客がいることも分かりました。
「体に良いのでまず朝起きて白湯に入れて飲んでいます。」という本多さんは写真OK。
会場:東京都港区赤坂1-12-32アークヒルズ アーク・カラヤン広場
東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」3番出口より徒歩1分、銀座線「溜池山王駅」13番出口より徒歩1分
「私が子供の頃は父は稲作をしていました。
その後、新松戸は宅地化が進み、田も畑も無くなり、私の代になり温室で蘭を栽培したり、ブロッコリー、そら豆、トマトを栽培していたこともあります。
父(亘さん)も高齢となり、父から私、息子の代へ農地を守っていくため、都市農業の課題に取り組んでいます。
息子が後を継いでくれることになり、これからは息子の時代だと思っています。」
「農業のことだけ考えていてはだめだと思います。
例えば新松戸のイベントで美味しいカクテルを提供していますが、街の賑いといいますか、話題性に一役買ってみたいからです。
直売所のある松戸に足を運んでもらいたい。
レモン畑が景観や社会資本としてイメージアップに貢献できないかと考えています。」
崇史さんの話し方は穏やかな中にも明快です。
「父さん、たくさんの人に足を運んでもらうことは分かったけど、そもそもこの店を広く知らせるため、SNSを利用した発信も必要なんじゃないかな。
例えばキウイフルーツは、消費者自体が食べ頃を判断するようになってきたけど、オレンジ類の好みの食べごろを知ってもらえたら‥。そんな発信もする必要があると思うのだけど。」
崇史さんは追熟(ついじゅく)という言葉を、文系の記者にも分かりやすく説明してくださいました。
「作物の病気や耐寒性など知識はまだまだです。
逆に、店頭での対面販売は全く苦になりません。
父や叔父にはない自分の役割があるのではと考えています。
共働きの妻は別の仕事をしていますので、レモン入りのサラダを私が作り、家でもレモンを広めています(笑)。」
鵜殿さんのレモンと外国産のものを持参して馴染みの「バー・ドルチェ」へ
「ブラシを使った丁寧な皮の洗浄」と「果汁を絞る力は軽め」に注意を払っているそうです。
(同行の妻)「美味しい~。レモンの味が濃いのにまろやか、そしてスッキリ、爽やか」
美味しいレモンのおかげで幸せな気分になりました。(※オリジナルカクテルについてはマスター・登丸さんに直接お尋ねください。)
父・敏弘さんの時に熱のこもった取材対応。それを優しく解説してくださる息子の崇史さん。
優しいまなざしで見る母・優子さん、叔父の芳行さん。
普通のサラリーマンである市民記者の目には大変そうに映り、ちょっと酸味が強そうに感じました。
そんな中で生産されている松戸産レモンに感じた爽やかさは、愛情を持ってレモンを育てている、鵜殿家三家族の皆さんの穏やかな、優しい人柄のように暖かく感じました。
[住 所] 松戸市新松戸6-16
[連絡先] udono1845@gmail.com