「誰もが自分らしく、お互いの存在を認め合い、安心して暮らせるまち」として、
障害のある人もない人も”住み続けたいまち・まつど”をめざしています。
【平成29年版】松戸市障害者就労施設等事業所ガイドブックより
身体的な障害のある方だけでなく、知的障害や発達障害・精神障害など目に見えない障害をお持ちの方も暮らしています。
目に見えない障害は、その障害の症状も程度も個人差が大きくとても複雑ですが、一般的な理解として以下のように説明されています。
●発達障害とは、生まれつきの脳機能の発達のアンバランスさ・凸凹(でこぼこ)と、その人が過ごす環境や周囲の人とのかかわりのミスマッチから、社会生活に困難が発生する障害のことです。
日本における発達障害の定義は、平成16年に制定された「発達障害者支援法」によって定められており、『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいいます。
障害の程度も幅広く目に見えないだけに、私たちはどの様に接したら良いのか分からない事が多いのも実情です。
そこで松戸市内で、目に見えない様々な障害のある子ども達のお仕事チャレンジを通して、社会との繋がりと現状を取材してきました。
「 ぷれジョブまつど」チャレンジ
「ぷれジョブまつど」とは、障害のある子どもが、地域のジョブサポーター(ボランティア)と地域の企業で、半年間(1週間に1回1時間)お仕事を体験する地域活動です。
松戸市にお住まいの「お仕事体験をしたい」と思っている小学校5年生~高校3年生を対象に、支援を必要としている子どものお仕事体験をサポートしています。
目指していることは、障害の有無にかかわらず共に助け合うことの出来る地域社会(共生社会)の創造です。
サポート企業は、「特別養護老人ホーム 緑風園」「松戸の観光案内所 ひみつ堂」など3カ所(取材当時は3カ所ありました)で、毎週土曜日か日曜日にお仕事体験を実施しています。
緑風園は、和名ヶ谷にある特別養護老人ホームです。
タイムカードを押して、1時間のお仕事チャレンジがスタートしました。
「人との関わりが好き」と話してくれたMちゃんは、緑風園のケアマネージャーさんや相談員さん達だけでなく、入所者の方達とも楽しく会話をしていました。
静かだった緑風園に、若くて明るい空気が流れ込んでいました。
そんなMちゃんですが気持ちに波があるそうで、お仕事チャレンジにはジョブサポーター(ボランティア)の支援が必要になります。ジョブサポーターは、各お仕事場所で待ち合わせて、1時間チャレンジの子どもの様子を見守り必要な時にサポートをします。
「町の中に子供をくり出していけるようにしたいです。」と話していました。
お仕事体験は、障害を持った子どもがお仕事の体験が出来るだけでなく、社会に出て触れ合う機会が増えることで、社会の偏見の壁を低くしてお互いの理解の一歩を目指してもいます。
私達は、知らない事やどう接して良いか分からない事は避けてしまいがちになります。
障害のある子どもが、お仕事体験を通して社会と関わることの出来る機会は、チャレンジしている子どもにとっても、触れ合う人たちにとっても理解を深める貴重な場となっています。
地域でこの様な理解が深まる場所が身近に増えていければ、理解も進みやすくなります。
詳しくは、ぷれジョブまつどのホームページをご覧ください。
障害者に対する就労支援と、相談窓口
一般の企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行い、就職活動支援及び就職後の職場定着支援を行います。
一般の企業等への就労が困難な障害者に向けて就労機会を提供します。生産活動を通じて知識と技能が向上するよう必要な訓練を行います。A型では事業者と障害者が雇用関係を結び、原則として最低賃金を保障するしくみの”雇用型”の障害福祉サービスです。
一般の企業等への就労が困難な障害者に向けて就労機会を提供します。生産活動を通じて知識と技能が向上するよう必要な訓練を行います。B型では事業者と障害者が雇用関係を結ばず、利用者が作業分のお金を工賃としてもらい、比較的自由に働ける”非雇用型”です。
【精神障害】サポートネット松戸(根本)電話047-710-2055
【知的障害】相談支援センターエール(五香)電話047-710-0080
【身体障害】相談支援事業所みらい(松戸新田)電話047-368-0670
「豆のちから」(指定就労継続支援B型事業所)
その内の「豆のちから」と、「ジョイベーカリーなごみ」の2カ所を取材しました。
平成18年11月に運営を開始した「豆のちから」は 、新京成線上本郷駅から徒歩3分のところにあります。
「豆のちから」を運営しているNPO法人まつかぜの会は、平成29年6月に社会福祉法人として松戸市より認可されました。
現在のビルは平成27年4月に立て替えられ、1階が店舗、2階は豆腐工房、3階は受注の作業場(企業から受けたテープ貼りやチラシ折の作業をしています)になっています。
障害のある人たちが、「より自分らしく」「できないことがあっても困ることのない」「安心した生活」を送ることができる「共生社会」の実現を目指しています。
松戸市内の「南部市場」にある「元気畑」へ納入したり、個人宅(現在20件のお宅)からの受注・配達もしています。
配達や販売のために町に出ることが、地域の交流にもなっているそうです。
国産大豆は、宮城県産の大豆を使っています。東北大震災後は風評被害で2~3年売り上げが落ちてしまったそうですが、今では良質な材料を使った安心な商品であることが浸透してきているとのことでした。
社会福祉法人まつかぜの会理事長の柳町美恵子さんは、ご自身も障害のあるお子さんをお持ちです。NPO法人を立ち上げたきっかけは、障害のあるご次男が養護学校卒業後に行き先がなかったからなのだそうです。
豆のちからでは、3つの障害(知的・精神・身体)の利用者を受け入れていますが、日々いろいろな理解や配慮が求められている事業所において、柳町さんの利用者に対するやさしさや細やかな愛情が事業所全体に行き届いていました。
ここでの経験により、一般就労(がんセンターに就職)につながった利用者も出てきているそうです。
柳町さんの願いは、製品の売り上げが増えて利用者の工賃が向上することと、松戸の豆で作る「松戸ブランドの豆腐」が出来ることだそうです。
ということで、取材時に手作り豆腐を購入しました。
厳選された材料で作られた豆腐は、大豆の味がしっかりと感じられて美味しい豆腐でした。
また、しょうが豆腐や黒ごまの豆腐は、生のしょうがが入っていたり、黒ごまもしっかり入っていて、工場生産にはない手作りならではのお味でした。
上本郷にある「豆のちから」に美味しいお豆腐を買いに行かれた際は、ぜひ利用者の皆さんとも交流して頂きたいと思います。
ジョイベーカリーなごみ(指定就労継続支援B型事業所)
松戸市役所そばにある安くて美味しいと人気の「ジョイベーカリーなごみ」は、社会福祉法人ジョイまつどが運営している指定就労継続支援B型事業所のパン屋さんです。
平成26年5月に、閉店するパン屋を引き継ぎ、道具や棚などをそのまま利用してオープンしました。
利用者(障害者)8名が、9時から16時まで働いています。
仕事は、配達、レジ、イートインの接客、製品の袋詰め、ラスク作りや洗い物など、シフトを組んで各日3名が働いています。
取材時に来店されていた馴染みのお客さんが、レジ担当の吉村さんの名前を呼んで気軽に会話をしながらパンを購入されていました。利用者が、地域に受け入れられているパン屋さんであることを感じました。
パンを買いに行かれた際は、是非気軽に声をかけて交流をされてみて下さい。
「 障害があっても、小さいころからの家庭でのお手伝いがとても大切であると、利用者を見て実感しています。」とおっしゃる管理者の高橋桂さん。
「家でお手伝いをしてきた利用者は、細かいことに気が利きます。障害があるから、危ないから、出来ないからという理由でお手伝いをしてもらうことを避けてしまいがちですが、家でお手伝いをしてきた方は、社会に出た時に役に立っています。」
私が、パーティー用にサンドイッチのプレートを注文しましたところ、ワンプレート2,000円でこんな素敵な盛り合わせを作ってもらいました。
お味もとっても美味しくて大満足でした。
ちょっとしたパーティーなどの注文にも対応して下さいます。
バーガーやコロッケの盛り合わせなど、好みに合わせた注文に対応してくれるそうですよ!
共生社会の実現に向けて
松戸市では、障害のある人が社会参加をしやすくするための障害者支援に携わる市民活動をしているボランティア団体が129団体あります。
こうした身近な市民活動に参加したり関わったりすることも、共生社会に向けてのひとつです。
支援学校で開催されるイベントなどで障害者と触れ合う機会もあります。
いろいろな人が暮らしている現代において、壁を作るのではなく関わっていくことが「やさしい暮らし」に求められています。
障害を持つ人との交流を通して、健気に仕事をしている姿に励まされたり、違う世界を知ることで視野が広がったりします。
共生社会の実現に向けて、交流や支援が進むことを願っています。
『障害者は、人間としての尊厳が尊重される生まれながらの権利を有している。障害者は障害の原因、特質及び程度にかかわらず、同年齢の市民と同様な基本的権利を持ち、このことは、まず第一に、できる限り普通の、また十分に満たされた、相応の生活を送ることができる権利を有することである。』