松戸まつど
ライフプロモーション
まちの人びと 2025年5月27日

お釈迦様の誕生日 それが花まつり♪~フェス?ライブが楽しめる松戸市常行院の花まつり~

雨でサイクリングが中止になった4月の日曜日、SNSの告知で知った音楽ライブに出かけてみました。地図アプリを頼りに冷たい雨の中を行ってみると… 
そこはお寺の裏口でした。ギターの音が聞こえてきます。

  • 記者の心中「(ずいぶんポップな道標だな…)」

    本堂に進むと中はリハーサル中で、出演者と音響スタッフとのやり取りが聞こえます。

    「声のモニター、リバーグ(残響)高め、ローを削ってもらってもいいですか?」

    会社帰りに寄る新宿、渋谷、下北沢等のライブハウスが大好きな記者の血が騒ぎます。

    花男さんの熱いライブ

    花男(はなお)さん「北海道の小樽から来ました花男です。今日から俺も春を始めます」
    観客「うおぉぉぉ~!」
    記者「(何なんだ これはあぁぁ~!皆、熱狂的なファン!?)」

    約40分のライブは一瞬に感じ、アンコールの拍手が鳴りやみません。

  • 花男さん「ありがとう松戸!!」 ※承諾を得て画像を掲載しています 

  • 花男さんの常行院ステージ出演は4回目とのことで、大人も子どもノリノリ。魂のこもった演奏スタイルに記者も魅了されます。
    お揃いの法被を着たスタッフや、境内に出店したキッチンカーに並ぶ人々に伺うと、お寺の檀家さん以外にも地元小金地区の住民、東漸寺幼稚園の現役・卒園生の親子、東京から駆け付けた花男さんのファンも来場していることがわかりました。

    二ツ木常行院「花まつり」

    熱いライブのレポからスタートしましたが、今回は1502年開創の歴史あるお寺、浄土宗 二木山 般舟寺 常行院(ふたつぎさん ばんしゅうじ じょうぎょういん)「花まつり」を突撃取材しました。

  • カワイイお釈迦様(=誕生仏

  • 取材の許可を得たものの、ご住職自ら司会進行中の「何回泣くんだろう。一杯一杯です」状態で、直接インタビューは難しそう。マイク越しのユニークなお話を頼りに取材を進めます。
    ご住職「特にちびっ子は楽しんでいってください!」
    花まつりは4月8日に生まれたお釈迦様の誕生を祝う行事。常行院では音楽ライブも合わせ、無料イベントとして平成30年(2018年)から開催しているようです。

  • 伝説をデザインしたTシャツ

  • 誕生仏に甘茶をかけてお祝い

  • 法話

    「南無阿弥陀仏を唱えましょう」ご住職の法話が始まりました。
    子供たちを前に「調子こいてないか?偉そうにしていないか?ポケモンカードを自慢していないか?自分たちの世代はビックリマンシールでしたけど」と、わかりやすく慢心を戒める話し方はライブのMCのよう。大人の心にも響きます。

  • 本堂の端では、花男さんとの記念撮影やサインを求める長い列。法事以外で寺に行かない記者にとっては見たこともない光景ですが、ご住職は気にする様子もありません。

  • 寺で踊るロックンロール!?

    法話が終わり、ご住職は境内にいる男性を見つけると、ガッチリ抱擁。

    住職「おおお (泣)」
    記者「(ま、また泣いてるぞ…!)」

    ご住職がSNSを発信する間隙を縫って、お相手の男性・唐さんに取材します。

    唐さん 「(花まつりは)初めて来ました。以前、松戸に住んでいるときに、子ども同士が幼稚園で一緒でした。今は音楽仲間でもあります。彼は東漸寺幼稚園やスタジオでもライブをしていますから、子どもたちはもちろん、保護者にも知られた人なんです

  • 唐さん(左)と、法被姿の背中がご住職

  • 唐さんにお聞きしなかったら危うく帰るところでした。
    なんと、このあと14時10分から出演のロックバンドのボーカルはご住職!?

    ご住職「ご一緒にどうぞぉぉぉ~!!お釈迦様の誕生日ぃ、それが花まつり、イェ~♪」

    飛び跳ねたり、マイケルジャクソンを真似た下手な(失礼)ムーンウォークや、ロックンロールの神様チャックベリーのダックウォークを繰り出す、魅せるステージ。大人は手拍子、子どもたちはキャーキャー飛び跳ね、興奮状態です。
    面白おかしい歌詞ですが、先ほどの法話のエッセンスも含まれ、ご住職の作詞に違いありません。

  • ライブハウス形式のタイムテーブル

  • ご住職のバンドのステージ

  • ご住職はどんな人?

    そろそろ皆さんもお気づきでしょう。ご住職の郡嶋 昭示(ぐんじま しょうじ)さんは、ご自身の写真はNG、「目立ちたくないので花まつりメインでお願いしますの条件で取材OKでした。
    大正大学大学院出身の博士、同大学非常勤講師、浄土宗総合研究所研究員の経歴から、検索エンジンで多数お名前が出てきますが、確かに1枚しか写真を確認できませんでした。

    ご実家の鋸南町 浄蓮寺の先代ご住職・郡嶋 晨定(ぐんじま しんじょう)さん(写真左)にお話を伺いました。
    「こういう形で若い方が寺を訪れるハードルを低くすることも、ひとつの方法だと思います。うちは長男が継いでおりまして、あれは次男なんです。 博士号を取っていて、教えたりするタイプかと思いますが…

  • ご両親(左が郡嶋晨定さん)

  • 筆頭総代として挨拶される渋谷信雄さん

  • 当院総代を務め、三ケ月町会長でもある渋谷信雄さん(上記 写真右)は、
    「当院は東漸寺の隠居寺として歴史もありますし、最初は驚きましたが、時代の流れもあり若い住職のやり方も良いかなと思います。イベントに限らず、檀家を連れて増上寺などへの団体参拝にも、積極的に取り組んでくださっています」

    ぐんじまん

    さすがにご本人のインタビュー無しではわからないことも。翌週アポを取って再訪しました。

    ー 画期的なイベントですね!
    「花まつりはお檀家対象が一般的ですが、思い切って企画してみました。花まつりもそうですが、盆踊りや演芸大会をやっていたという昔話をよく聞き、よし、まとめて復活させよう!という想いもありました。浄土宗総合研究所勤務時にちょうど法然様没後800年で出版やシンポジウムが盛んで、そこでの経験が今につながっています。東日本大震災後に寺と社会との関わりが見直されてきたのも大きいです。フードバンクへのご寄付も皆さんにご協力いただいています」

    ー 道標から横断幕・幟などのイラストもユニークです。
    「SNSに浄土宗2代目聖光上人(しょうこうしょうにん)の伝記の漫画を描いて投稿していたところ、月刊『浄土』の編集者の目に留まり、“ぐんじまん”のペンネームで浄土宗のお祖師(そし)様である聖光上人、良忠上人(りゅうちゅうしょうにん)について連載させていただきました」

    そこでも本名を出さない徹底ぶり。漫画の中で浄土宗のお祖師様の尊さに涙する“ぐんじまん”は花まつり会場での郡嶋住職のイメージそのものでした。

  • フードバンク活動への協力

  • 月刊誌等への寄稿の様子

  • ー 音楽との関わりを教えてください。
    「大学時代に先輩にギターを教えてもらったのがきっかけで、巣鴨の路上で演奏したりライブハウスに立ったことが思い出です。目黒のお寺での修業時代は休みに渋谷のライブハウスに音楽を聴きに行くのが楽しみでしたが、住職になってからはそれも難しくなってきました」

    ー 単純に「花まつり」だからゲストが「花男さん」ではないようですね?

    “あめにもまけて かぜにもまけて それでもいいよといえる そういうものにわたしはなりたい すべてはそこからじゃないか  Soいえるものにわたしはなりたい”(注)

    と歌う花男さんのバンド『太陽族』“doromizu(泥水)”という曲に巡り合い、その内容が法然様の教え、浄土宗の思想の尊いところに重なっていたんです。修業時代や研究員時代…壁にぶち当たった時に電車の中で聴いて泣いたこともありました」

  • これもご住職のデザイン

  • ぐんじまん≒ご住職

  • 知者のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし

    偶然訪れた花まつり。ご住職の法話は「調子こいてないか?」と慢心を戒める一方で、ステージに立つ演者たちを「ぶちかましています!!!ふおおおお」と推しています(SNSなど)。
    子どもたちにライブを体験してほしい。挑戦するロックの魂を感じてほしい。失敗したり、ずっこけても必ず救われます。大きな声で歌ったり、お念仏を唱えるだけでもいいですよ!と伝えているように感じました。
    取材を通じてこれらは浄土宗の「知者のふるまいをせずしてただ一向に念仏すべし」という教えであることを知りました。

  • ご住職(後ろ姿)を撮影したかった (涙…)

  • 浄土宗 二木山 般舟寺 常行院】
    所在地:松戸市二ツ木128

  • あとがき

    取材中、花男さんが、記者の最近聴いているシンガーソングライターの師匠と判明。花まつりの後、その方の“生誕祭”ライブのゲストに花男さんが出演と分かり行ってみました。チェキ(写真右)を持ってお寺を再訪すると…

    ご住職「うおおおおお!!千葉さん!!なんと…ライブハウスの住人!ロケンローラーだとは!!」

    さらにご住職の想いを理解するために花男さんのSNSを遡ると… 、記者が40年以上推している歌手のイベントに花男さんがぁぁぁ(写真左)。
    偶然から始まったさまざまな縁。ライブ好きの記者には来場者の笑顔の理由が分かりました。次回は皆さんもぜひ!

  • 矢印赤が記者の撮影に偶然写っていた花男さん(2022年小樽)。矢印青が師弟関係。※承諾を得て画像を掲載しています。

  • (注)花男さんの承諾のもと、歌詞を本文に使用しています。

    歌詞出典:太陽族「doromizu」(作詞・作曲/花男)
    イラスト:ぐんじまん 
    取材協力:花まつりスタッフの皆さん、魁-KAI-さん、あがた森魚さん、成嶋伸隆さん

    千葉 淳

    千葉 淳 (ちば じゅん)

    「人生は旅」、学校卒業後、松戸市民から転勤族に。東北勤務時代に家族と「おくの細道」をたどるサイクリングを始めました。平成26年、転勤で帰郷をきっかけに市民ライターに応募。週末は”松戸芭蕉”になり、自転車に乗って松戸再発見の旅にでかけています。

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