素敵な発見!2016年9月2日

「自画自装」表具師・中島大輔の挑戦!

掛け軸(かけじく)って格好イイ!

大胆な「書」、ゾウとクジラを描いた「日本画」
そして二つの作品を引き立てている裂(きれ)のデザイン
「掛け軸」と言えば仏画や水墨画を和室の床の間に飾る…イメージがありました。
(…掛け軸って、格好イイ!)

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「The guest house」書家・小山みづほ先生の作品

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 「NON REPOPENSEE」作者は?記事の後半に

今回取材するまで、素敵なデザインの布地に作品を貼り付けたものだと思っていました…。
一体どんな人が、どうやって作っているのでしょうか?

表具師・中島大輔 氏

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今回は表具師・中島大輔(なかじまだいすけ)さんを取材しました。
東京生まれ。
幼稚園から新松戸在住、43歳
独立して13年目
自称「仕事=遊び=稽古(けいこ)と趣味」だそうです。
中島さんの「遊び」とは何を指すのでしょうか?


憧れの場所 東京・銀座「鳩居堂(きゅうきょどう)」

創業400年の紙や書道具の老舗

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会期中多い日は1日300人以上の人が来場

画廊のひしめく銀座にあって、
鳩居堂の3・4階は書道家なら一度は個展を開きたい画廊中の画廊だそうです。

中島さんは、そこで開催される「以白会(いはくかい)表装展」に平成23年から出品しています。

-仕事とはどのように違うのですか?
「表装展は師匠や各地の同業の先輩、書家・画家から生の批評を聞ける貴重な場です。」

冒頭の小山みづほ先生の新作、そして中島さんがどのように表装するのか楽しみです!

 

そして、中島さんはもう一つの思いを秘めて出品しているそうです。


「以白会(いはくかい)」とは?

昭和11年結成の表具師による表装研究団体
毎年9月、様式にとらわれない「造形表装」による展覧会を銀座鳩居堂で開催しています。
「独立してからも師匠の下で勉強、憧れの会に入会できたときは嬉しかったです。」

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 ポスター。昨年の作品で構成

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 ハガキ。「中島霽月堂(せいげつどう)」が中島さんの屋号


 表具師の仕事は体験しないと分からない

― 作業風景を取材させてください。
表具師の仕事は見たり聞いたりするだけでは理解できません!、実際にやってみませんか?」
中島さんの仕事の合間をぬって記者の掛け軸づくり体験が始まりました。

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紙質、汚れの有無から墨の種類まで確認

「私の仕事の特長は何と言っても、書家の作品を展覧会や買い手のお客さまより先に鑑賞できること。
高価な作品になりますとお客様の客間(床の間)に招かれることもあります。飾るお部屋との調和も大切です。
作法に厳しいお客さまもいらっしゃいますので、言葉遣いはもちろん、茶の湯や食事の作法まで気を付けます。」

書道、日本画、篆刻(てんこく)のお稽古をしているという中島さんの経歴、日常も気になります。

裂(きれ)選びから
「好みの裂を選択し、好きな寸法で掛け軸づくりを体験、遊んでください」
伝統的な表装は作品の内容や季節に沿った決まりごとがたくさんあるようです。

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デザインも材質も色々

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絹は握るときゅっと新雪を踏みしめるような音

縮み入れ
裂は濡らすと縮みます。そのため一度濡らして乾かす「縮み入れ」という作業を行います。
乾くまで次の作業はお預け。一日に出来る作業は限られるのです。
今回の体験は8日間。仕事で忙しい中、ご協力いただきありがとうございます。

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刷毛(はけ)

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噴霧器

裂、和紙、刷毛(はけ)、噴霧器、ハサミ、モノサシ(目盛が尺・寸・分)、後半にはカンナ、カナヅチ…材料や道具を説明する中島さんから日本の伝統産業・職人への敬意が伝わってきます。

イラストで作業工程を解説!

イラストレーター・なかじままさこさんが風呂敷を掛け軸にした体験を引用して作業工程を紹介します。

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 2011©なかじままさこ

驚きその① 作品にも裂にも裏に和紙を貼っていた。

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筋魚子を糊付けしてアクセント

驚きその②「台紙と思っていた」裂は切りついだり、くりぬかれて作品と一体となっていた。
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-なぜ切りつぐのですか?
「同じ厚さになり巻くことができるようになりますし、いろんなデザインが表現できます。」
裂の切れ目がほつれないように糊付けしたり細かな作業が続きます。
驚きその③ 作業が繊細
「1分(いちぶ=3mm)だけのり付けて、髪の毛一本分だけ…」の説明に神経衰弱(笑)

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驚きその④ 木工作業がある。和紙、裂、木の調和に感動です。

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軸先。材質も色もたくさん。特注することも

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軸棒の先端はこけし職人のように回転する刃で削る

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ひもを通して

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完成

見えないところまで!

掛け軸づくりで知った一番の驚きは見えないところへの工夫でした。
裏打ちのつなぎ目に線が入らないように写真のような処理が行われています。

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和紙を裂いて

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切り口を噛み合わせる

 さらに、こんなところまで気配りが…

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実は裂を複雑に貼り合わせている

「展覧会に合わせて納品する場合は搬入前に掛けて掛け癖を作ります。
 
 きれいに掛けられるように巻きグセを取るのです。」

体験最終日に改めて中島さんの作品を見ると…裂の組み合わせを選んで、裏打ちして、切り継いで、あげ裏して…作品を見る目が変わりました。

 


展覧会を支える貸額

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額装 (イメージ)

「日展」、「毎日展」などの公募展から個展、会派や同門の展覧会(社中展というそうです)、カルチャー教室の展覧会まで、表具師のもう一つの顔が貸し額の表装です。

出展者から作品を預かり表装・貸額・会場への搬入がセットの仕事。展覧会が終わると作品を剥がして返却します。

「百点近く納める額装は時間と体力との勝負。別の仕事場兼倉庫にこもって量産します。妻の協力も欠かせません。」

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「秋の展覧会シーズンは家族総出です。」

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搬入、展示専門業者に引き継ぐ


「自画自装」は遊びの集大成

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「大学の先生に絵を習っています。」

実は冒頭の掛け軸、ゾウとクジラを合わせた絵は中島さんの作品
「年に1度の表装展『以白会』に出品する作品のひとつは自分で描いて自分で表装しているのです。」

今回取材を受けるまでなぜ表具師になったか、あまり深く振り返ったことはなかったという中島さん

「子供の頃からいろんな遊び、今思えばとても贅沢な経験をさせてもらいました。

 

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 松戸市七草マラソンのTシャツ!

親戚、地域・サークルの先輩方…いつも周囲に素晴らしい大人がいて遊んでいただいてきました。
師匠や書家・画家の先生もこのような恵まれた環境の中で出会うことができました。

表具師は自分で選んだ道ですが、ここに至るまで、いろんな選択肢を与えてくれた皆さんがいます。」

 

年1回、鳩居堂で開かれる以白会。そこに自画自装を出品するということは、生の批評を聞けるということに加えて、
「『ここまで遊べるようになりました。』と伝える、つまり遊びの本気度を見ていただきたいという、もう一つの思いを実現する場なんです。

私にとって、遊びは単なる娯楽ではありません。
『仕事=遊び=お稽古・趣味』

本気で遊ぶことでその本質に迫り、無駄を省くことの重要性、 無駄を排した美しさが分かってきたように思います。」
ー最後に、中島さんにとって表具師とは?
表に出ない黒子でありながら、書家や画家の作品にパワーをぶつける。

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「表具は黒子、前面に出ちゃいけない。一方で個性は出さなければならない。」

 「芸術家の先生が個展を開くって大変なことです。凄いエネルギーというか、パワーを持っていると思います。
『中島霽月堂(せいげつどう)の表装に任せる』という書家や画家の期待に応えていきたいですね。」

この記事を書いたライター(市民記者) 千葉 淳

「人生は旅」、学校卒業後、松戸市民から転勤族に。東北勤務時代に家族と「おくの細道」をたどるサイクリングを始めました。平成26年春、転勤で帰郷。これからは”松戸芭蕉”となり旅人の目から見た「松戸」を伝えていきます。