個性がたのしい2015年7月16日

松戸の人シリーズ・あの人に聞いてみた!その2~「長谷川恵」さん

人の魅力は街の魅力

「松戸の魅力は《人》」これがわたしの考える松戸の魅力。
今回は桜並木の並ぶ静かな住宅街・小金原で輝く女性「長谷川恵(めぐみ)」さんを紹介します。


赤いドアを開けると

ななピンクドア桜並木が立ち並ぶ小金原。
その通りにある赤いドアの小さなお店。
「あら!いらっしゃい!元気だった?あら~ずいぶん伸びたわねぇ!」元気な声が返ってきます。小金原に美容院を構えて今月で32年。座席数2台の小さなお店ですが、地域のお客様がひっきりなしにやってきます。
じょうずに髪をととのえるだけではない……彼女がこうも人をひきつけるのはなんなのか? 以前から気になっていました。

子どものころから「お店やさん」

北海道は釧路生まれ。「あの頃はあそこでは食べていけなかったから」─そんな理由で家族で松戸に転居。 子どものころから飲食店を経営するご両親のお手伝いをしていました。 ご両親がお客様と接する姿を垣間見ることも。
「きれいなものが好きなのよ(笑)だから、人をきれいにする仕事をやりたかったの」
結婚、出産を経て、子育てしながら29歳で現在のお店を開店。少しずつ地域の中に浸透していくお店になりました。

最初の試練

お店も順調に進んで子育ても少しひとだんらくした41歳。
彼女に訪れた突然の試練。卵巣ガンでした。ステージ3。
手術、抗がん剤投与のために3週間閉店して1週間営業の生活を半年間続け、卵巣ガンは消えたかに見えました。ところが45歳で再発。転移をしていました。
「治療のために店を休む、そして店を開ける。そういう生活をまたやんなきゃいけない。そう思ったら『もういやだ』って思ったのよ」
治療を続け、お店も続ける─病院の中を連れ回される恐怖がいつしか長谷川さんの気力をうばっていきました。そしてお店を閉めようと思うのでした。

友だちの存在

「でもね」
一度は美容室を閉めようと思っていた長谷川さんの思いをとどめたのは、やはり「人」。同じ美容室で働く「腹心の友」の存在でした。
「美容室やめたら、彼女と繋がりが切れそうな気がしてね。私にはそっちのほうが辛いこと。だから、やっぱり治して続けようって思ったのよ」

無我夢中

1ななしごと治療を続け、お店も続ける─再びそんな生活が始まりました。
そんなときに、お店の表のテントとドアの色を思い切って変えることに。それまでネイビーとグレーのシックなものでしたが、現在の鮮やかな黄色と赤のものに変更。ちょうど近隣で建売住宅が300棟建設された時期と重なり、一気にお客様が増えたのです。
「ひらきなおって、無我夢中で走りぬいたわ。」
走り抜いて気づけば50歳。
「もう治療はいいですよ」そう医師から告げられたのはガンを発症して実に9年後のことでした。

ひとりの女の子

ガンを乗り越えたあと、飛びこみで訪れた一組の親子。
中学生だった娘さんがその後、高校生になりガンを発症しました。抗ガン剤で髪の毛が抜けることへの恐怖と羞恥心。思春期まっただ中の少女の悩み苦しみは長谷川さんにとっては自分のことのようにわかったのでした。
大人よりも骨格がまだ小さい女子高生。「ブカブカでおばさんくさくて」似合うウィッグがないのです。バンダナも似合わない。結果帽子をかぶるだけ。けれどかわいくない。気分はどんどん落ち込みます。
「かわいそうだなぁ……帽子でもいいけど……そうか……帽子に髪の毛がくっついてたらおしゃれなのに」なんとかしてあげたい……けれど、どうやっていいのか。彼女にピンクのニット帽をプレゼントするのがやっとでした。

ことばをことばで終わらせない

その後ぱったりその親子は来なくなりました。
1年後、女の子のお母さんが、髪の毛が伸び放題になってお店にやってきました。女の子はもうこの世にはいませんでした。そのとき長谷川さんが思ったこと。
「口ではいいことはたくさん言える。けれど、それを実行しなくてはいいことはただの理屈に過ぎない。」
抗ガン剤の治療は何をやっても気が晴れない。夢や希望もなくなることも。病気の治療は医師がやる。美容師の自分に何ができるか─それは「きれいにすることで心を明るくさせること。心を元気にするお手伝いができるのでは」そう思った長谷川さんは動き始めます。

じぶんにできること

防止長谷川さんが頭の中にあったもの─それはウィッグのついた帽子。
「抗ガン剤の治療中は何をやっても心が晴れない。いつも死と隣り合わせだから。 なんといっても髪の毛が抜けたら美容院そのものも関係なくなるじゃない?でも、これがあれば美容室に行って『前髪はこんどこうしよう』とか言えるじゃない? 治療中に少しでも気持ちが明るくなれる、そんなお手伝いが自分にできることなんじゃないかって思ったのよ」
治療中でも違和感なく日常を過ごせれば……闘病生活を体験したからこその発想でした。試行錯誤を重ね、ついにこの帽子は商標登録されるにまで至ります。

人をきれいにすることが私の仕事

教会全体2009年─地元の地域SNS「ラブマツ」に参加したことでつながったお友達と、ひょんなことから近くの教会を借りて「クラシックコンサート」を開催することに。
お店に来るお客様。決して元気な方々ばかりではありません。 ご家族に連れられて髪の毛をセットしてもらうのを楽しみにしているお年寄り。足の不自由な方。病気の方も。
「女ってね、いくつになってもきれいになるとうれしいものよね。私はそのお手伝いをもっとしたいと思って」
近所でもおしゃれをして、すてきな音楽を聴いて、ゆっくりお茶を飲む。日常とは少しちがう空間づくりをしたい─そんなコンセプトからでした。

人が人を呼ぶ

konnsa-to飲食店のオーナーさんがお茶を出し、ピアニストさんご夫妻が演奏を。チラシはデザイナーさんが、カメラマンさんが写真を。受付も司会も音響も誘導も何もかもボランティア(もちろん実費はコンサート代金から支払われますが)。
長谷川さんの熱い思いに共感し、なにより長谷川さんの魅力にひきよせられるメンバーばかりなのです。そのコンサートも今年で7回目。「今年はどんなふうにしようかしら♪」今からわくわくがとまりません。

やることがたくさん!

教会コンサートと、美容師の仕事。彼女の仕事はそれだけではありません。
家に帰れば脳梗塞で闘病中のご主人のお世話も待っています。
そして、4年前の震災直前には3度目のガンの発症。こんどは胃ガンでした。
「他にやることや心配なこともあったから、早く治さなきゃ!って」再び乗り越えたのでした。

人間交差点

ボード「お店にはね、いろんな人が来るのよ」
─病気を抱えた方、家庭に問題を抱えた方、もちろん「晴れの日」を控える幸せそうな方も。
そんなひとりひとりのお客様と真摯に向き合い、気持ちに寄りそえるからこそ、お客様が長谷川さんに「会いに来る」─そんなふうに思ったのでした。
「お客様から教えてもらったことを、また別のお客様に教えてあげたりね。地域SNSラブマツで知った情報も教えてあげたりしてるのよ」

お店の壁面いっぱいに設置したのは「真っ黒なボード」。チョークで書けるようになっています。
「いずれはここに小金原のマップを描いて、お店の情報とかを載せたいの。」
大きな目をさらにキラキラさせて熱く語る長谷川さん。「こんなすてきな女性になりたいな♪」そう本気で思う記者なのでした。


店「ヘアメイクサロン NA-NA」
住所/千葉県松戸市小金原2-12-5
電話/047-342-1089(要予約)
定休日:火曜日・第2、3月曜日

この記事を書いたライター(市民記者) 小川 照美

大分県出身、松戸在住23年になります。食べ歩きが趣味です。「人の魅力が街の魅力」そんなことを伝えることができればと思っています。